2008.7.31
第14回公開研究会報告
■日 時:2009年7月31日(金)14時〜18時
■会 場:関西大学心斎橋オフィス
■参加者:約55名
■テーマ:「協働的メディア・リテラシーの可能性と課題:
民放連メディアリテラシープロジェクト・セミナー2009」
■プログラム
全体司会:村田麻里子(関西大学)
【14時〜】
○主催者あいさつ
○はじめに「なんのための協働的メディア・リテラシーか:
民放連プロジェクトの全体像」:水越伸(東京大学)
【14時30分〜15時45分】
○「パネル・ディスカッション:民放連プロジェクトの過去・現在・未来」
登壇者:
・山内千代子(青森放送)
・服部寿人(チューリップテレビ)
・砂川浩慶(立教大学)
司会:境真理子(桃山学院大学)
休憩(約10分)
【16時〜17時30分】
○「ディスカッション・ワークショップ:協働と継続のために」
進行役:村田麻里子(関西大学)
【17時30分〜】
○おわりに「構造的崩壊と市民的新生」:
ソフィア・ウー(呉翠珍:台湾政治大學)&水越伸(東京大学)
【18時〜19時30分】
*暑気払い軽食パーティ
■概 要:
近年、メディアのデジタル化の進歩のなかで、送り手と受け手との新たな回路の構築が試されているなど、放送の在り方についての構造的な変化が問われています。そのような状況を踏まえて今回の公開研究会では、1999年以来日本の民間放送連盟(以下民放連)がメディアリテラシー向上のために取り組んできた「民放連・メディアリテラシー実践プロジェクト」の活動の過去・現在・未来というテーマのセミナーを企画しました。
まずイントロとして、初期から民放連プロジェクトのデザインと運営にかかわってきた水越さん(東京大学・メルプラッツ運営メンバー)が、協働的メディアリテラシーとしての民放連プロジェクトの概要や、これまでの民放連プロジェクトの展開と射程、プロジェクトの意義、そして、積極的な市民参加型のメディア空間の拡散を目指す「新たな崩壊と構築」のための今後のメディアリテラシーをめぐる課題と可能性について、話しをしました。
次に、過去民放連プロジェクトに参加した地方民放局の事例として、メルプラッツ運営メンバーでありながら青森放送局報道制作部に所属している山内さんによる活動報告が行われました。山内さんは、青森放送ではラジオ&テレビフェスティバル(2003年)と青少年ブロードキャスター事業(2005年〜)などのRAB自社事業のノウハウを活かして「青森県総合社会教育センター」との連携のもとで学校単位でのプロジェクトを2006年以来毎年続けて実施しており今年で4年目を迎えている、と紹介しました。
また、もう一つの事例としては、服部さん(チューリップテレビ)が2008年度実施した民放連メディアリテラシー実践プロジェクトを紹介しました。服部さんは、募集した地元の高校生とともに、当局のメンバーだけではなく、地域で活動している住民ディレクターや、地元の富山大学の学生、富山インターネット塾など、地元のネットワークを活かして実践をサポートできるよう工夫しながら「CMづくり」を行った実践の概要や、反省点、今回の実践を通して学んだことを紹介しました。
二つの報告を受けて、砂川さん(立教大学・メルプラッツ運営メンバー)は、今の日本のメディア産業、とりわけテレビをめぐる状況をデータで概略しつつ、「1996年以降放送デジタル化とケーブルテレビの普及による放送市場のニューズと性格が変わりつつある」と前提。特に、新聞とテレビにおける広告費の減少や、有料メディアの凋落、ユーザーの高齢化などと言ったマイナス面と、「テレビなどマスメディアから知ってネットで掘る」という相変わらずマスメディアへのニーズが働いているというプラスな面を指摘。「モノづくりのプロであり続ける」ことや、「視聴者の声を聞こうとする本当のサービスとしての顔が見える視聴者づくり」が可能な「抽象的な公共性から具体的な公共性へ」、そして「円滑な社内雰囲気づくり」などをあげながら、送り手としてのメディアリテラシーの必要性について力説しました。
一通りの報告が終わってから司会者である境さん(桃山学院大学・メルプラッツ運営メンバー)の提案により、報告者各々の実践の感想について話を聞きました。最初に報告した山内さんは、「地域の人との向き合うことの難しさと重要性を再確認した」「県民とのつながりを大事にしたい」と言い、今後も持続的な実践に意欲も見せました。服部さんは、「地方局には資金の問題があるものの、まずは着手することは意味が大きい」「地域の人々から協力を得られる協同的な仕組み作りも大事」「今は継続していくためには何が必要なんだろうかと考え中で、地域住民ディレルターを拠点とする人を育つ活動をやりつづけたい」と話ししました。砂川さんは、「このような場の大事さ、局と局のつながり、局と一般人とのつながり、研究員と局とのつながりなど、人とのつながりを考えた仕組み作りが大事」「なお、局の中でも資金作りに困難があるので、その問題の解決のための取り組みおよびビジネス的な活動とつなげる方法も考えられるのではないか」と提案しました。また、「来年の実践が終わると、民放の1割の人が関わってきたことになる。今日の場を含めて、今後も情報教育とネットワーク作りを持続していければと思う」といい、3人とも実践の「持続」の重要性を強くアピールしました。
後半は、今年2009年度の実践局と継続展開を試みる6局の関係者が話し合うディスカッションワークショップを行いました。6ユニットに分けられたテーブルを回りながら意見交換を行い、最後には各ユニット代表者(6人)による5分間のポイント・サマリー発表が行われました。短期集中型実践を予定している鹿児島テレビや、学校の高い壁を崩すことを思索中の九州朝日放送、地元の美術館と連携してメディアリテラシー実践を計画中である岡山放送、ラジオ離れになっている若者(とりわけ高校生)を取り戻そうと工夫している和歌山放送、地域ネットワークを活かすことと携帯を利用した実践を考え中のチューリップテレビ、そして青森メディアネットワーク構築と送り手のメディアリテラシーの学びを課題とする青森放送、が報告をしました。その内容は主に、「資金不足など実践に取り組む地方局の経営的な面」や、「プロジェクトに参加する対象者の選び方」、「プロジェクトの内容とスケジュール」、「局内の人のモチベーション」、「実践の媒体:携帯の活用、クロス媒体」、「プロジェクトの期間」、「参加者のなかでのコミュニケーション」など、いろいろな課題が総合的に提示されたものでした。
最後のまとめには、2001年から日本のメディアリテラシーにかかわってきたソフィア・ウーさん(台湾政治大學)によるこれまで日本のメディアリテラシーへの評価と、改善点、今後の市民参加型テレビの行方などについて話しました。水越さんは、「クロスメディアもしくはクロスコミュニケーションの大事さ」と「地域のなかでどのようにメディアをクロスしながら情報を繰り広げていくのかが大事」だと話しました。
今回の公開研究会は、「放送はどう作られるものか」「子どもたち(視聴者)にとって放送はどのように開かれていくべきなのか」「変わっていくメディア環境と接点を探りながらうまく付き合えるか」「どうすれば地域に根を下ろした放送に近づけるか」「そもそも放送は誰のためにあるものなのか」といったメディアをめぐるたくさんの課題が飛び交う場となりました。しかしながらそれは長年言われ続けてきた課題であり、そう意味でも今後メルプラッツの果たす役割は重いと思いました。(報告者:崔銀姫/メル・プラッツ運営メンバー)